カテゴリー : 詩

アルチュール・ランボー「フレーズ」(『イリュミナシオン』所収)

ひさびさにランボーを訳す。

フレーズ

驚いた私たちの四つの目に、世界はやがてひとつの黒い森にまできりつめられるでしょう。二人の忠実なる子どもたちには、世界はひとつの浜辺になり、私たちの明晰な共感には、世界はひとつの音楽ハウスになります。そのとき、私はあなたを見いだすでしょう。
地上にただ一人残された老人が、穏やかで美しく、「前代未聞の豪奢」にかこまれておりますように。そのとき、私はあなたに跪くのです。
私があなたのすべての思い出を実現し終えて、あなたを束縛するすべを心得たひととなっていますように。そのとき、私はあなたを絞め殺しましょう。

〜〜〜〜〜
自分が無敵なとき、だれも退いたりしないだろう。ハチャメチャに陽気なとき、だれも馬鹿になんかされないだろう?
最高に意地悪なとき、もうだれもどうすることもできないだろう?
着飾るがいい、踊るがいい、笑うがいい。それでも俺は決して「愛」を窓から放り出したりしないだろう。

〜〜〜〜〜
女友達、乞食女、ものすごい子ども! おまえにはどうでもいいことだ、こうした不幸な女たちも駆け引きも、そして俺の当惑も。
おまえのそのありえない声を上げて、俺たちから離れずにいろ。おまえの声。この卑劣な絶望を美化する唯一のもの。

どんよりした、七月の朝。灰の味が宙を舞う。薪の匂いが暖炉にしみ出る。花々は水に浸かり、小径は荒れ放題、運河の霧雨が畑を抜ける。おもちゃと香は、なぜもうなくなってしまっているのだろうか。

XXX
俺は鐘楼から鐘楼へと綱を張り、窓から窓へと花輪をつなげ、星から星へ鎖を渡した。そうして、俺は踊る。

XXX
高台の沼からは、絶えず煙がでている。純白の日暮れの上に立ち上がるのは、どんな魔女だろうか。そこから降りてくるのは、どんな紫の発葉だろうか。

XXX
公共財源が友愛の祭りに垂れ流されているあいだも、バラ色の炎の鐘は雲間に鳴り響いている。

XXX
墨汁の心地よい香りをかき立てながら、黒い粉末が俺の眠れぬ夜にやさしく降り注ぐ。俺は燭台の火を落とし、ベッドになだれ込む。そして影の方に向き直り、目の当たりにするのだ、おれの娘たち、おれの女王たちを。

Phrases / Illuminations, Arthur Rimbaud

原文はこちらなど。

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アルチュール・ランボー「曙」

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ランボーに出会わなかったら、武蔵美でフランス語とらなかっただろうし、フランス語とらなかったなら、きっと哲学の道に入ることもなかっただろうな。

アルチュール・ランボー「曙」(『イリュミナシオン』所収)

夏の曙を懐(いだ)いてしまった。
立ち並ぶ宮殿の前に、身動きするものは何もなかった。水は死んでいた。影たちのキャンプも、まだ森の道に留まっていた。僕は、歩きながら、生き生きとしてほの暖かい息吹たちをつぎつぎと目覚めさせていったんだ。するとね、小石たちが瞼を開いた。翼の群れが音もなく舞い上がった。
最初の挙動はと言えば、初々しくも蒼ざめた煌めきにあふれていた小径で、一輪の花が僕に名を告げてくれたことだった。
モミの木越しに髪を振り乱すブロンドの滝に微笑みかけた僕は、その銀ギラの峰に、女神の姿を認めたんだ。
そこで僕は、一枚一枚そのヴェールを剥(む)いていった。並木道では、腕を振り振り。原っぱを抜けるときには、雄鶏のやつに密告してね。大きな街にはいると、女神は教会の鐘やドームにまぎれて、姿をくらましてしまって。それでも僕は、大理石の河岸を乞食みたいに駆けずり回っては、彼女を追い続けた。
道を登りきったところ、月桂樹のある辺りかな、ついに僕は、集めたヴェールで彼女をふわりと取り巻いたんだ。ふと、彼女の茫漠たる身体が、かすかに匂いたった。曙と子供は、樹の足元に倒れ込んだ。
目覚めれば、正午だった。

(訳 平井靖史、2006年11月、2011年4月修正)

原文は、こちらなどで。

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