2019年 11月 の記事

トゥールーズWS:Physical Time, Biological Time: Bergsonism Today

トゥールーズで10月24,25日に開催された、ポール=アントワーヌ・ミケルとエリー・デューリングの企画による今回のワークショップのテーマは、物理の時間と生物の時間。

最初にエリーから「拡張ベルクソン主義」の趣旨が説明され、京都マニフェストのバリー・デイントンによる英訳が近く出版されることもアナウンスされました。

初日はバリー・デイントンによる汎心論と光自身の現象経験をめぐる問題提起的なトークから始まり、平井がベルクソンにおける階層的な多元的時間構造をモデル化するための「識別可能性」概念を導入するプレゼンを行い、最後に数理生物学者であるジュゼッペ・ロンゴによる生物時間と物理時間の違いついてのトーク、歴史性の問題を含む問題提起まで、それぞれ1〜2時間の十分な議論を重ねて行われました。

ミケルによる熱のこもったオープンング・リマークで幕を開けた二日目は、自然博物館のグイヨンによる生物種と目的因にまつわる諸問題、郡司先生による天然知性の密度の高いトーク、そして目覚ましい活躍をしている気鋭の理論生物学者マエル・モンテヴィルによる「新奇性」のモデル化にかんする発表。先在する可能性に還元されてしまう物理における新奇性との対比で生物における新奇性を論じるモンテヴィルの議論は、非常に先進的で刺激的なものでした。

午前から初めて丸一日ですが、発表を各3つに絞り、徹底的なディスカッションの時間を取ることで、学際的なギャップを超えた相互批判へ踏み込んだ充実した議論を実現していたと思います。
新しい「拡張ベルクソン主義」の扉がまた開いた二日間だったと言えると思います。

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グルノーブルWS:Remembering: Analytic and Bergsonian Approaches

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グルノーブルでの記憶の哲学ワークショップを終えて帰国。
現地の記憶の哲学センター(CPM)のカーケン・マイケリアンと共同で開催した今回の企画は、これまで断絶されていた2つの伝統、分析系の記憶哲学とベルクソンにおける記憶の議論を橋渡しする実験的な試み。CPM自体、昨年10月にオープンしたばかりだが、マイケリアンの主導によりものすごいペースで活動している。
他方、PBJでは『物質と記憶』の研究を開始した2015年度から、分析系の議論との接続は意欲的に行ってきた。知覚の哲学時間形而上学、そしてもちろん、デイントンを介して時間経験の哲学へと。そして、今回、CPMの開設に伴い、ベルクソン哲学のもう1つの重要な理論的重心をなす「記憶」についても機が巡ってきた。6月にマイケリアンの元を訪問し、ベルクソンの記憶理論との接合可能性について平井がプレゼンし、今回のWSの開催に至った。

CPMからは主に分析系の理論家、ハイブリッド理論の論文(これが今回の企画の大きなきっかけになった)の著者であるAndré Sant’Annaや、最近Remembering from the Outsideを出版したChristopher McCarroll、ベルクソンのデジャヴュ理論にも詳しいDennis Perrin、私的言語における記憶の問題を論じるReza Mosmerらが参戦。日本からは平井のほか、著名なベルクソン研究者である藤田尚志、永野拓也両氏に加え、言語の観点から記憶にアプローチしている桜木新氏。フランスからは盟友Sebastien Miravète。そしてキーノートとしてバリー・デイントンが参加。

お互いに方法的・理論的に小さくない隔たりがある中で、どうやってより生産的な対話ができるか、それぞれが柔軟かつオープンな姿勢で取り組んでいる点が強く印象に残った。

次の展開については、また後日報告できればと思う。