2017年 6月 の記事

日本時間学会に参加

2017.06.10-11 日本時間学会第九回大会@山口学芸大
公開シンポジウム
http://www.rits.yamaguchi-u.ac.jp/?p=1657
全体スケジュール
http://timestudies.sakura.ne.jp/wp/wp-content/uploads/2017/03/平成29年度第1号-大会お知らせ号4月1日発行.pdf
個別発表
http://timestudies.sakura.ne.jp/wp/wp-content/uploads/2017/05/自由報告発表タイムテーブルH29xlsx.pdf

初めて参加してきました。特に今回の公開シンポジウムは、心に学際的な時間論的アプローチで迫るというもので、PBJの主旨に共鳴する部分が多くかなり興味深く拝聴しましたが、そもそも時間学会そのものが非常に多彩な人材が集まっており、個人発表でも普段は聴けない類いの議論(応用数学、経済学、言語学、教育学、防災学、天文学etc)に大いに刺激を受けました。

シンポでは、天野薫さんがDecNef(フィードバックを与えて自分で自分の脳活動を変動させる手法)を用いることで意識状態と安静時アルファ波との「相関」を越えて「因果」と言えるって話がかなりクリア。竹村浩昌さんは灰白質ではなく「白質」(いわば神経のハイウェイって比喩をされていた)の研究をされていて珍しい話を聞けた。そんな深いところでアストロサイト、オリゴデンドロサイトたちがモニタリングしつつ神経束の振る舞いを変えていく動的な仕組みがここ5年くらいで分かってきたという点を質問して確認とった。すごい。そして時間学研究所の寺尾将彦さんは、バラバラの場所でちぐはぐ速度の異なる処理をしているのに、出力としての心の時空は安定した時間になっているのは、いったいどこで統合しているのかっていう話。ベイズ推定で確率と確率の掛け算をやって、よほどのことでない限りもともとのバイアスに保守的に順応させてるとか。この辺、脳内時間の多層性から、生体レベルでの現象的な時間スケールにどう寄与するのかっていう部分を埋める話なので、ベルクソンにとってもほんと重要。

ゲオルグ・ノルトフの講演会についてはまた。

セラ・トカイ『音楽家としての身体 音楽的運動性の現象学』

Serâ Tokay, Le corps musicien – Une phénoménologie de la motricité musicale, Liber, Montréal, 2016

2016年度PBJシンポジウムで招いたジャン=リュック・プチから紹介された書籍。

自身が一流の指揮者である著者が、音楽家の身体でなにが起きているのかを現象学的に論じている稀な書籍。そこでまなざしや呼吸、身振りが果たす役割を、具体的に解明している。現象学や神経科学の記述などはプチが監修したと聞いた。

第一章は「固有身体、キネステーゼ、音楽」。第二章は「音楽的感情の神経心理学的基礎」、第三章は「音楽における時間性」、第四章「コンサートでの間主観性」、第五章「オーケストラ指揮者の運動的エンパシー」という構成。

全般に具体的な楽節が例示されていて、音楽的素養があればさらに面白いのだろうな、と。第三章ではフッサールの時間図式が応用されているし、temporalité affectanteとしてのニュアンス、音楽的運動の多次元性など、他では見られないしなやかに行き届いた分析が、すごく新鮮。

これは翻訳されて広く哲学者だけでなく音楽家や音楽関係者の人にも読まれてほしいと強く思った。